支持多角形。
支持多角形とは、床に接しているすべての点を囲んでできる、いちばん外側の多角形のことです。重心がこの内側にあるあいだは倒れず、外へ出た瞬間に倒れます。
三脚なら三角形、4本脚のテーブルなら四角形、オフィスチェアなら五角形。接している点そのものではなく、点を結んだ「面」で考えるのがこの言葉の要点です。片足立ちが不安定なのは、支持多角形が足の裏1枚ぶんしかないからで、杖を1本つくと途端に楽になるのは、点が増えて面が広がるからにほかなりません。二足歩行ロボットの制御でも、この多角形の中に重心の投影を収め続けられるかどうかが基本の指標になります。
いちばん弱いのは、脚と脚のあいだ
支点が正n角形に並んでいるとき、多角形の余裕は方向によって違います。脚が張り出している向きは脚の長さいっぱいまで余裕がありますが、脚と脚のあいだ(辺の中点の向き)はそれより短い。中心から辺の中点までの距離は、脚の長さのcos(π/n)倍です。3本なら0.500倍、4本で0.707倍、5本で0.809倍、6本で0.866倍。人が体を預ける向きは選べないので、安定性はこの「いちばん短い向き」で考えることになります。
本数を増やせば多角形は円に近づきますが、伸びしろは急速にやせます。4本から5本にすると約14%増えるのに、5本から6本では約7%、6本から7本では約4%。10本にしても0.951倍で、1.000倍には永久に届きません。届いたときはもう脚ではなく円盤です。
補足:ここでの計算は支点が正n角形に等間隔で並び、脚の長さがすべて等しいという単純化のうえに成り立っている。実際の椅子はキャスターが首を振るため接地点の位置が動き、支持多角形の形も座るたびに少し変わる。日本のJIS規格(S 1206)はこの多角形を直接測るのではなく、隣り合った二つの支点をストッパで止めて荷重を加え、転倒の有無を記録する方式をとっている。