Uの三角形。
Uの三角形とは、アブラナ属(Brassica)の主要な6つの種の関係を、1枚の三角形で表した図のことです。頂点に3つ、辺の上に3つ。頂点どうしが2つずつ組み合わさると辺の種になる、という関係を示します。
三角形の頂点に置かれるのは、基本になる3つの種です。B. rapa(記号AA・2n=20)はハクサイ、カブ、コマツナ、ミズナ、チンゲンサイなどを含む種。B. nigra(BB・2n=16)はクロガラシ。B. oleracea(CC・2n=18)はキャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、ケール、コールラビ、芽キャベツを含む種です。
辺の上に置かれるのは、その2つが合わさってできた種です。B. juncea(AABB・2n=36)はカラシナやタカナ、ザーサイ。B. napus(AACC・2n=38)はセイヨウアブラナ(ナタネ)やルタバガ。B. carinata(BBCC・2n=34)はエチオピアガラシ。染色体の数も、20+16=36、20+18=38、16+18=34ときれいに合います。
1935年、Nagaharu U
この図が示されたのは、1935年に Japanese Journal of Botany 第7巻(389〜452ページ)に載った論文です。著者名の表記は Nagaharu U。禹長春(う・ながはる/ウ・ジャンチュン、1898〜1959)で、東京に生まれ、日本で学び、農林省の農事試験場でアブラナ属の研究を進めた研究者です。1950年に韓国へ渡り、現地では育種の父として知られています。九州大学が禹長春コレクションを公開しています。
論文の題は「Genome analysis in Brassica with special reference to the experimental formation of B. napus and peculiar mode of fertilization」。図を描いただけでなく、B. rapa と B. oleracea を実際に掛け合わせて B. napus を作ってみせたことが題に入っています。予想を立て、実物で確かめる、という順番でした。
いまも現役の枠組み
90年前の図ですが、アブラナ属の育種・遺伝の研究では現在も基本の枠組みとして使われています。2022年に The Plant Cell へ載った B. carinata のゲノム解析論文は、題に「the final piece of the Triangle of U」(Uの三角形の最後の1ピース)と入れています。
補足:ダイコンは同じアブラナ科だが属が異なり(Raphanus sativus・2n=18)、この三角形には入らない。各種に含まれる品目や変種名(var.)の扱いは資料により差がある。