陳述副詞。
陳述副詞(ちんじゅつふくし)とは、下に決まった形の言い方を要求する副詞のことです。呼応の副詞、叙述副詞とも呼ばれます。「決して〜ない」「たぶん〜だろう」「もし〜なら」「まさか〜まい」のように、副詞と文末の述べ方がセットで働きます。
ふつうの副詞は、後ろが何であっても構いません。「ゆっくり歩く」「ゆっくり歩かない」、どちらも成立します。ところが一部の副詞は、後ろの形を指名します。「決して」と言い出した時点で、文末はほぼ「〜ない」に決まる。言い終える前から着地点が見えている、少し変わった品詞です。
呼応の型は、固定ではない
やっかいなのは、この指名の関係が時代とともに動くことです。国語学者の浅野信は1933年の著書で、「さっぱり……だめだ」「よもや……まい」「てんで……ない」といった組を挙げつつ、これらが当時すでに崩れかけていると書いています。逆に「決して」は、明治以前には打ち消しを伴わない使い方もありました。組み合わせのほうが後から固まった例です。
「全然」が分かりにくいのは、これが理由
副詞「全然」は、江戸後期に借用された当初、肯定にも否定にも付きました。それが昭和前期に打ち消しとの結びつきを強め、戦後にまた肯定を伴う形が現れます。呼応の相手が入れ替わる途中の姿を、私たちはリアルタイムで見ていることになります。文法書が「本来こう」と書きたくなるのは分かりますが、本来がどこを指すかは、切り取る時代によって変わります。
補足:呼応の副詞という枠の立て方や、どの語を含めるかには研究者ごとの差がある。昭和40年代の副詞研究は呼応に重心を置いており、その整理が当時の辞書記述にも影響したと指摘されている。