約物。
約物(やくもの)とは、句読点・括弧・中黒・ダッシュのように、文字ではないけれど文章を組むために使う記号の総称です。印刷や組版の現場で使われてきた言い方です。
読点「、」句点「。」かぎ括弧「」丸括弧()中黒「・」三点リーダ「…」疑問符「?」感嘆符「!」ダッシュ、いずれも約物です。文字は言葉そのものを表しますが、約物は言葉の切れ目や関係を表します。声で読み上げると多くが消えるのに、消すと意味が変わるという妙な位置にあります。
日本語の約物は、枠に入っている
日本語の活字は原則として正方形の枠に収まる設計で、約物も同じ全角の枠を持ちます。そのため「」や。が連続すると、記号のまわりの空きが並んで目立ちます。組版ではこの空きを詰めて組むのが普通で、逆に詰めないまま印字すると、文の間に不自然な穴が空いたように見えます。行頭に句点や閉じ括弧を置かない、行末に開き括弧を置かないという扱いは禁則処理と呼ばれ、日本工業規格「日本語文書の組版方法」(JIS X 4051)が方法を定めています。
同じ記号に、二つの形がある
やや込み入った事情として、同じ記号に欧文用の形と和文用の形が別に用意されている場合があります。ダッシュがその例で、Adobe-Japan1というフォントの規格では、欧文約物形状のダッシュがU+2014 EM DASH、和文約物形状のダッシュがU+2015 HORIZONTAL BARに対応しています。見た目のよく似た横棒が、実装によって別の文字コードに割り当てられるわけです。この割り当ての揺れが、環境をまたいだときの文字化けの原因になります。幽霊文字のように出所の分からない字が規格に入った話とは別で、こちらは出所のはっきりした記号が二重に登録された結果です。
補足:約物という語そのものの由来については、確かな説明を確認できていない。英語では punctuation(句読法)と、記号の集合としての marks を場面で使い分ける。なお欧文の em ダッシュ・en ダッシュの名前は活字の m と n の幅に由来し、記号の意味ではなく寸法から付いた呼び名である。