マンデラ効果。
マンデラ効果とは、多くの人が、事実と異なる同じ内容の記憶を共有している状態を指す通称です。個人の思い違いではなく、思い違いの中身まで揃っている点が特徴とされます。
名前の由来は、南アフリカの元大統領ネルソン・マンデラ氏です。2009年、米国アトランタで開かれたポップカルチャーの大型イベント「ドラゴンコン」の会場で、超常現象を扱う書き手のフィオナ・ブルーム氏が「マンデラは1980年代に獄中で亡くなった」という自分の記憶を話したところ、周囲の複数人が同じ記憶を持っていました。ブルーム氏はこれに名前をつけ、2010年に専用サイトを開設して同種の事例を集めています。マンデラ氏が実際に亡くなったのは2013年12月5日で、1990年に釈放され1994年に大統領へ就任しています。
俗称として生まれ、あとから実験された
この語は学術用語として作られたものではなく、出発点は超常現象を扱う場でした。そのため「並行世界の書き換えの証拠」といった説明とともに広まった経緯があります。一方で、事実と異なる記憶が形成される現象自体は虚偽記憶(false memory)として長く研究されており、集団で内容が一致する点をどう説明するかが論点になります。
視覚版の実験(2022年)
2022年、シカゴ大学のディーパスリ・プラサド氏とウィルマ・ベインブリッジ氏が、査読誌 Psychological Science に視覚的マンデラ効果の実験を発表しました。よく知られたロゴ・キャラクター40画像について、正しい版と細部を作りかえた2版を1組で提示し、正しいものを選ばせる方式です(実験1・100人)。多数派が本物を外し、しかも同一の誤答へ集中した画像は7枚でした。C-3PO、フルーツ・オブ・ザ・ルームのロゴ、おさるのジョージ、モノポリーのおじさん、ピカチュウ、フォルクスワーゲンのロゴ、ウォーリーが該当します。続く実験では視覚的な注意の差や日常で目にする画像の偏りが検討され、記憶から描かせる課題(実験4・50人)でも同じ誤りが自発的に現れました。2024年にはクリアラー・シンキングの追試プロジェクトが389人で実験1をやり直し、再現に成功しています(条件を満たしたのは8画像)。
補足:なぜその画像で誤りが揃うのかは解明されていない。「ピカチュウの耳の黒が尻尾へ移った」「モノポリーのおじさんが片眼鏡の別キャラクターと混ざった」といった説明は解説記事で紹介されるが、実験で検証された結論ではない(諸説あり)。出典:Prasad & Bainbridge (2022) Psychological Science 33(12)/Clearer Thinking Replication Project 報告書 #8(2024)/Britannica「Mandela effect」/Know Your Meme「The Mandela Effect」。