用語辞典 — ツギノテ。FUNGLOSSARY

女房詞

女房詞(にょうぼうことば)とは、室町時代初期ごろから宮中や院に仕えた女性の使用人「女房」たちが使い始めた、主に衣食住に関する隠語的な言葉のことです。「女房言葉」とも書きます。

ものごとを直接言わずに済ませる、上品で婉曲な言い換えの語彙です。閉じた職場の内輪言葉として生まれましたが、のちに将軍家に仕える女性から武家・町家の女性へ、さらに男性へと広まり、多くが現代の日常語として定着しました。応永27年(1420年)ごろ成立の『海人藻芥(あまのもくず)』などの文献に、当時の記録が残っています。

作り方は、大きく二型

一つは頭に「お」を付ける型です。田楽を「おでん」、水を「おひや」、腹を「おなか」、豆腐を「おかべ」、菜を「おかず」。丁寧の「お」を冠しつつ、後ろを削ったり見立てたりします。もう一つは、語の頭の一音だけ残して「文字(もじ)」を足す型で、「文字詞(もじことば)」と呼ばれます。杓子が「しゃもじ」、髪が「かもじ」、鮨が「すもじ」。空腹の古語「ひだるし」を言い換えた「ひ文字」は、江戸時代に形容詞化して「ひもじい」になったとされます。

言い換えが、原語より長生きする

女房詞の面白さは、婉曲だったはずの言い換えが標準の座に着き、元の語のほうが消えたり格下げされたりした点にあります。「しゃもじ」は残り、「杓子」は慣用句に退きました。頭の音だけ残す省略と、ぼかしの言い換えという製法は、現代の若者言葉ともよく似ています。

補足:定義は精選版 日本国語大辞典・デジタル大辞泉「女房詞」(コトバンク)等に基づく。個別の語の由来(おかべ=壁への見立て、ひもじい=ひ文字の形容詞化など)は辞書・語源解説の説明によるもので、語源には諸説がある。