ミナート共鳴。
ミナート共鳴とは、水の中にできた空気の泡が、自分の大きさで決まった振動数で伸び縮みして音を出す現象のことです。泡は空気なので縮みやすく、まわりの水は重い。この「やわらかいバネ(空気)と重り(水)」の組み合わせが、決まった速さで揺れます。
名前の由来は、オランダの天文学者マルセル・ミナート(Marcel Minnaert, 1893〜1970)。1933年、『London, Edinburgh, and Dublin Philosophical Magazine and Journal of Science』第16巻235ページに載せた論文「On musical air bubbles and the sounds of running water」で、流れる水や落ちる水滴の音は泡の振動によるものだと指摘し、その振動数を求める式を導きました。式の要点は、振動数は泡の直径に反比例するという一点です。小さい泡は高く、大きい泡は低く鳴る。
身のまわりの音は、たいてい泡の音
この見立ては、コップに水を注ぐ音、川のせせらぎ、雨が水面を打つ音といった「水の音」の広い範囲に当てはまります。逆に言えば、私たちが水の音だと思って聞いているものの多くは、水そのものの音ではなく水に巻き込まれた空気の音だということになります。注ぎ口の音が途中から高くなるのも、生まれる泡が小さくなっていくからだと説明できます。
1989年、H・C・パンフリーらは高速カメラを使い、水滴が水面に落ちたときの音源が「閉じ込められた泡」であることを確かめました。2018年にはケンブリッジ大学のサミュエル・フィリップス、アヌラグ・アガーワル、ピーター・ジョーダンが泡の振動そのものを直接観測し、空気中に聞こえる「ポチャン」も、その泡が空洞の底の水面を振動させることで生じていると示しています。同じ実験では、映像から測った泡の大きさをミナートの式に入れた理論値7.9キロヘルツに対し、実測は8.6キロヘルツでした。
補足:ミナートの式は泡が真球であることを前提にしているため、実際の泡の形のゆがみや、容器の壁との相互作用によって実測値とはずれが出る。上記2018年の実験では約10%のずれが報告され、その要因も併せて説明されている。ミナート本人は太陽の光球や大気の研究で知られる天文学者で、この論文は本業から外れた仕事にあたる。