用語辞典 — ツギノテ。FUNGLOSSARY

マッスルメモリ

マッスルメモリとは、同じ動作を何度も繰り返すことで、意識しなくても体——とくに指——が手順を覚えていく現象です。心理学では「手続き記憶」と呼ばれる運動学習の一種にあたります。電卓のテンキーやキーボードを、手元を見ずに打てるのはこの働きによります。

直訳すると「筋肉の記憶」ですが、実際に記憶しているのは筋肉そのものではなく、脳と神経の回路です。繰り返し行った動作は、いちいち考えなくても自動で再生できる「型」として定着します。自転車の乗り方を体が覚えているのと同じ理屈で、一度身につくと、しばらく離れても比較的よみがえりやすいのが特徴です。

だから、配列は変えにくい

この性質は便利な反面、道具のデザインを縛る力にもなります。テンキーが「7・8・9が上」の並びを何十年も保っているのは、使いやすさが証明されているというより、大勢の指がその配列を覚えてしまっているから。仮に「もっと合理的だ」という並びを新しく用意しても、いったん染みついた動作を上書きするコストは大きく、現場は元の配列に戻りたがります。合理より慣れが勝つ、道具が更新されにくい典型的な理由の一つです。

補足:「マッスルメモリ」は運動を素早く正確に行えるようになる学習全般を指す通俗的な言い方で、筋トレ分野では「一度鍛えた筋肉が衰えても再び付きやすい」別の意味でも使われる。ここでは動作学習(手続き記憶)の意味で扱う。