用語辞典 — ツギノテ。FUNGLOSSARY

既存不適格

既存不適格とは、建てたときの基準には合っていたのに、そのあとルールのほうが変わったせいで、いまの基準に合わなくなった建物や設備の状態のことです。違反ではありません。

建築のルールは事故が起きるたびに厳しくなります。ところが、変わるたびに日本中の建物を作り直すわけにはいきません。そこで建築基準法の第3条第2項が、法令が変わった時点ですでに建っているものには改正後の規定を適用しない、と定めています。適用されないので違反にならない。「違反建築物」とは別の枠が、はじめから用意されているわけです。

ただし、手を入れると追いつかれる

免除はずっと続くわけではありません。増築などをすると原則として現行の規定が遡って適用されます。どこまで遡らせるかの範囲は同法第86条の7が定めていて、一定規模以下の増築なら既存部分には及ばない、といった線引きがあります。放っておくかぎりは古いままでよく、いじった瞬間に新しい基準の側へ引き寄せられる、という設計です。

検査報告書に出てくる言葉でもある

エレベーターやエスカレーターの定期検査では、判定の名前としてそのまま使われます。検査結果に「要是正(既存不適格)」と書かれた場合、日本エレベーター協会の説明によれば、それは「最新の法令の規定に適合していないことを示しており、遡及されるものではありません」という意味になります。たとえば2024年4月に義務化されたエスカレーターのハンドレール停止検出装置は、それ以前に着工した機械には義務が掛かりませんが、付いていなければ検査ではこの判定が付きます。

補足:似た言い方に「違反建築物」があるが、こちらは建てた時点で基準に反していたもので、扱いはまったく違う。既存不適格は、時間の経過そのものが原因で生まれる状態を指す。