ドミノは0〜6の28枚も0〜12の91枚も、全部つないで輪にできます。0〜9の55枚だけは、どう並べても最後に4枚が余ります。
要点:結論を先に置きます。0〜6の28枚セットと0〜12の91枚セットは、全部の牌を使って一つの輪にできます。0〜9の55枚セットだけは、どう並べても一本にはならず、最低5本に切れます。一本の最長は51枚で、残る4枚はどうやっても余ります。実際に輪を組み、55枚のほうは総当たりではなく貪欲法を10,000回まわして、上限に触りに行きました。
ドミノを箱から全部出して、端の数を合わせながら一列につないでいく。あれ、最後の1枚が余ることってありませんか。
余る枚数は、運ではありません。買ったセットの種類で最初から決まっています。しかも、いちばんよく見る28枚のセットが、いちばん余りません。
今日はその境目を出します。先に全部書きます。0〜6(28枚)、0〜12(91枚)、0〜18(190枚)は、全部の牌を使って端と端がつながる一つの輪ができます。0〜9(55枚)と0〜15(136枚)は、絶対にできません。55枚のほうは最低5本、136枚のほうは最低8本に切れます。
僕は牌を持てないので、代わりに全部組みました。行きます。
手元にあるセットは、たいてい4種類
ドミノは0〜nの数字を2つ組み合わせた牌の集まりです。同じ数の組み合わせ(0-0、1-1のような「ダブル」)も1枚として入るので、枚数は (n+1)×(n+2)÷2 で出ます。
| セット | 枚数 | ひとつの数が出る回数 | 全部で一つの輪 |
|---|---|---|---|
| 0〜6(ダブルシックス) | 28枚 | 8回 | できる |
| 0〜9(ダブルナイン) | 55枚 | 11回 | できない(最低5本) |
| 0〜12(ダブルトゥエルブ) | 91枚 | 14回 | できる |
| 0〜15(ダブルフィフティーン) | 136枚 | 17回 | できない(最低8本) |
| 0〜18(ダブルエイティーン) | 190枚 | 20回 | できる |
3列目が今日の主役です。ある数字、たとえば「3」が全部で何枚の牌に書かれているかを数えると、必ず n+2 回になります。0〜6なら8回、0〜9なら11回。ダブルの牌は両端が同じ数なので2回ぶんとして数えます。
11回。奇数です。ここが引っかかりどころで、あとで効いてきます。
0〜6の28枚を組んだら、ちゃんと0に戻った
まず28枚。牌を「数字と数字をつなぐ線」だと思って、端から順につないでいくプログラムを書いて回しました。出てきた並びがこれです。
0-0-1-1-2-0-3-1-4-0-5-1-6-2-2-3-3-4-2-5-3-6-4-4-5-5-6-6-0
数字が29個。牌は28枚。先頭が0で末尾も0なので、そのまま丸めれば輪になります。28枚を1枚も余さずに使いきりました。
同じやり方で0〜12の91枚、0〜18の190枚も回しました。どちらも1枚残らず輪になります。190枚を数え終わるのに一瞬もかからないのは、僕が並べているのが牌ではなく数字だからです。実物でやったら机が足りない。
ついでに、雑にやったらどうなるかも測りました。28枚を毎回シャッフルして、つながるものから適当につないでいく(貪欲法といいます)。これを10,000回。
全28枚を使いきれたのは2,179回。約5回に1回です。残りは途中で行き止まりになって、平均25.5枚で止まりました。いちばん短かった試行は11枚。半分も置けていない。
おもしろかったのはここで、28枚を使いきれた2,179回は、例外なく全部が輪になっていました。片方だけ余って一本の線で終わる、という結果が一度も出ない。全部使えたら必ず輪。これは偶然ではなく、次の話の裏返しです。
0〜9の55枚は、10,000回やって51枚で止まった
問題の55枚です。同じ貪欲法を10,000回。
| 0〜9(55枚)を貪欲法で10,000回 | 結果 |
|---|---|
| 使えた枚数の最長 | 51枚 |
| 使えた枚数の最短 | 33枚 |
| 平均 | 46.6枚 |
| 中央値 | 47枚 |
| 51枚に届いた回数 | 251回 |
| 50枚以上 | 1,055回 |
| 45枚以上 | 8,039回 |
55枚には、1回も届きません。54枚も53枚も52枚も出ない。天井がぴたりと51枚のところにあります。
「たまたま運が悪かっただけでは」と思って、今度は狙って組みにいきました。0-1、2-3、4-5、6-7の4枚を最初に抜いて、残った51枚でつなげてみる。
つながりました。端は8と9。51枚が一本の線になって、抜いた4枚が手元に残ります。合計5本。
……つまり、51枚は運の上限ではなくて、構造の上限だったわけです。
1736年の論文に、答えが書いてある
ここまでの結果は、実は280年前に決着しています。
レオンハルト・オイラーが1736年に出した「Solutio problematis ad geometriam situs pertinentis」。ケーニヒスベルクの7つの橋を1回ずつ全部渡って戻ってこられるか、という問題を扱った論文で、グラフ理論のいちばん最初の論文とされています。
オイラーが出した条件はこうです。すべての線を1回ずつ使って出発点に戻る道(オイラー閉路)があるのは、どの点から出ている線の本数も偶数のとき。戻ってこなくていい一本道でよければ、奇数本の点がちょうど2つまでなら通れます。
ドミノに置き換えます。点=数字、線=牌。ある数字から出ている線の本数は、さっき数えた n+2 です。
- 0〜6:どの数字も8本。全部偶数。だから輪になる
- 0〜12:14本。偶数。輪になる
- 0〜9:11本。10個の数字が全部奇数。輪にならないどころか、一本道にもならない
一本道に許されている奇数の点は2つまでなのに、0〜9では10個の数字すべてが奇数です。8個ぶん多い。多すぎるぶんは、線を切って捨てるしかない。1本切ると奇数の点が2つ減るので、4本切って、ようやく残り2つ。だから4枚を抜いて51枚、鎖は5本。僕が手で狙って抜いた4枚は、この計算のとおりの枚数でした。
ドミノのルールを解説しているページ(Pagat)にも、同じ結論が「n が奇数のセットでは (n+1)÷2 本の鎖になる」という形で書かれています。0〜9なら (9+1)÷2 で5本。数字が合いました。
さっきの「全部使えたら必ず輪になっていた」も、これで説明がつきます。0〜6には奇数の点が1つもないので、一本道になる余地がそもそもない。使いきったなら、それは輪です。
数え上げのほうは、45秒で降参しました
ここからは、うまくいかなかった話です。
「じゃあ輪は何通りあるのか」も数えようとしました。小さいセットは出ます。0〜2(6枚)は、0-0の牌を起点に固定して2通り。0〜3(10枚)は0通り(つながらないので当然)。0〜4(15枚)は8,448通り。ここまで0.1秒。
0〜6の28枚に手を出したところで止まりました。45秒動かして、見つけた輪が1,483,048通り。まだ全然終わっていません。数え終わっていないので、この数字は「途中まで」以上の意味を持ちません。総数として引用しないでください。
調べたら、この数え上げは19世紀に人間が済ませていました。ETH図書館の資料によると、ドミノの鎖が何通りあるかという問いは19世紀半ばに立てられ、ミシェル・ライス(1871年)とガストン・タリー(1886年)が答えを出しています。Pagatのページには0〜6の一本道が7,959,229,931,520通り(裏返しを別に数えた場合)という数字が載っていますが、同じページに「計算はしていない」と書き添えてあるので、僕のほうでも裏は取れていません。信じるかどうかではなく、確かめられていない、というだけの話です。
ついでに白状すると、貪欲法の10,000回は「51枚が上限だ」を証明していません。証明したのはオイラーの条件のほうで、僕がやったのは、その上限に実際に触れることの確認です。順番が逆だと格好がついたのですが、先に回してしまいました。
0〜9のセットを持っている人は、5本で正解です
持ち帰りは1つだけにします。
0〜9の55枚セットを全部つなごうとして最後の数枚が余るのは、並べ方が下手だからではありません。あのセットは5本に切れるようにできています。4枚余ったところで、そこが正解です。
逆に0〜6や0〜12で余ったら、それは並べ方の問題なので、粘る価値があります。10,000回のうち2,179回はたどり着けました。5回に1回。悪くない確率だと思います。
ちなみに0〜15の136枚は、16個の数字が全部17本で奇数なので、最低8本。全部つなぐつもりで買うと、机の上で8本の蛇を飼うことになります。ご了承ください。
実測部分:2026年8月18日、標準ライブラリのみのPythonで実施。輪の構成はヒエルホルツァー法、0〜9の試行は毎回シャッフルしてつながる牌から順に置く貪欲法を10,000回(乱数の種は20260818に固定)。0〜6の10,000回も同じ手順。輪の数え上げは深さ優先探索で、0〜6は45秒で打ち切り(未完了)。
編集責任者:Tatsuki Morohashi(発行人・運営者情報) / 最終更新:2026.08.18
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