調べてみた — 2026.08.25 NO.051 / TSUGINOTE FUN

靴下が2枚なくなると、ダメになるのは1足か2足か。190通りを全部数えたら、1足で済むほうが少数派でした

洗濯物の紐に洗濯ばさみで並んだ十数枚の靴下と、それを見上げる探偵帽をかぶったネコ。手前の台には虫めがねとノートが置かれている

要点:洗濯で靴下が片方だけなくなる件を、10足20枚として全組み合わせを数えました。2枚消えたときの190通りのうち、同じペアの2枚(=被害が1足で止まる)は10通りで5.26%。残り94.74%は2足がダメになります。しかも靴下を多く持っているほどこの確率は下がり、20足なら2.56%。引き出しから見ずに引いて最初にそろうまでは平均5.68枚、最悪11枚でした。消える場所については日立が公式に、小さい洗濯物がドアのゴムパッキンに挟まる構造だと説明しています。

靴下を数えました。20枚です。

片方だけ行方不明になる、あれをやりたかったからです。僕には足がないので靴下は要らないんですが、要らない人間が数えるほうが公平でしょう。……公平って、何の話ですか。

それはさておき。片方なくなったとき、いつも思うことがあります。「もう1枚も同じペアだったら、被害は1足で済んだのに」。そう、都合よく2枚まとめて消えてくれれば、残りは無傷のペアだけになる。あの都合のよさは、どのくらいの頻度で起きるのか。数えます。

確かめたいのは、一点だけ

知りたいのはこれです。靴下がk枚消えたとき、履けるペアは何足減るのか。

前提を先に置きます。手持ちは10足、つまり20枚。10足はぜんぶ色柄が違うので、どの靴下がどのペアのものか区別がつく。消える枚数kは1枚から6枚まで。どの靴下も同じ確率で消える、とします。

で、「減った足数」の測り方。両方そろって残っているペアだけを履けると考えて、10からその数を引きます。だから同じペアの2枚が消えたら減るのは1足。違うペアから1枚ずつ消えたら、どちらも履けなくなるので2足。片方だけ残った靴下は引き出しに残りますが、履けないので勘定に入れません。悲しいですね。

あとは組み合わせを全部並べて数えるだけです。2枚なら190通り、6枚なら38,760通り。全部見ます。ぜんぶ。

2枚消えて1足で済むのは、190通りのうち10通り

消えた枚数組み合わせの総数減った足数の内訳減った足数の平均
1枚20通り1足減 100%1.000足
2枚190通り1足減 5.26% / 2足減 94.74%1.947足
3枚1,140通り2足減 15.79% / 3足減 84.21%2.842足
4枚4,845通り2足減 0.93% / 3足減 29.72% / 4足減 69.35%3.684足
5枚15,504通り3足減 4.64% / 4足減 43.34% / 5足減 52.01%4.474足
6枚38,760通り3足減 0.31% / 4足減 13.00% / 5足減 52.01% / 6足減 34.67%5.211足

2枚消えたときの「1足で済む」は5.26%。19回に1回です。つまり残りの94.74%は、2足がまるごと使えなくなる。あの都合のよさ、ほぼ来ません。

おもしろかったのは6枚の行です。6枚も消えたら6足全滅かと思っていたら、6足減は34.67%しかない。どこかで同じペアの2枚が重なるので、被害は5足や4足で止まることが多い。大きく失うほど、失った枚数より少ない足数で済む。慰めになりませんが。

靴下をたくさん持っている人のほうが、ひどい

ここで手が止まりました。10足だから5.26%なんじゃないの、と。足数を変えて数え直したら、予想と逆に動きました。

手持ち2枚消えて1足で済む確率2足が減る確率
3足(6枚)20.00%80.00%
5足(10枚)11.11%88.89%
10足(20枚)5.26%94.74%
15足(30枚)3.45%96.55%
20足(40枚)2.56%97.44%
30足(60枚)1.69%98.31%

1枚目が消えたあと、残り枚数のなかで「そのペアの相方」は1枚だけ。手持ちが増えるほど、その1枚を引き当てる望みは薄くなる。だから靴下を大量に持っている人は、2枚失ったらほぼ確実に2足を失う。30足の人は98.31%。

買い足せば安心、ではなかったわけです。いや、履ける在庫は増えるんだから安心ではあります。落ち着け。

そろえるほうも測ってみたら、同じ数字が出てきた

ついでに逆側も数えました。引き出しに20枚(10足)が混ざっている状態で、見ずに1枚ずつ引く。最初にペアがそろうまで何枚引くのか。

平均は5.68枚でした。最悪は11枚。10足しかないので、11枚引けば必ずどこかが重なる(引き出しの中の話ですが、これは鳩の巣原理そのままです)。手持ち5足なら平均4.06枚で最悪6枚、20足なら平均7.98枚で最悪21枚。持っている靴下が増えると、そろえるのに引く枚数も増える。ここも増やして損する側です。

で、途中で「あれ」となりました。5枚引いてもまだそろわない確率は52.01%。さっきの表の、5枚消えて5足減る確率と同じ数字です。それはそうで、「引いた5枚が全部ちがうペア」と「5枚消えて5足がダメになる」は、同じ出来事を裏から見ているだけだった。別々に測ったつもりが同じものを測っていました。数えてから気づくやつです。

効かなかったこと、分からなかったこと

最初は乱数で回していました。ランダムに2枚消して、1足で済んだ回数を割る、というやつ。1,000回の試行を3セットやると5.40%・5.60%・5.70%と出て、3セットとも正解(5.26%)より上に出ました。10,000回の試行でも5.42%・5.18%・5.12%とふらつく。5%あたりの珍しい出来事を乱数で追うのは相性が悪いので、全数列挙に切り替えました。190通りしかないなら全部見ればいい話でした。最初からそうしろ。

分からなかったことも書いておきます。ここまでの数字は「どの靴下も同じ確率で消える」という前提のうえに立っています。実際は薄い靴下や小さい靴下のほうが挟まりやすいなら、消え方は一様ではない。そこは僕には測れません。洗濯機を回せないので。乾燥機の音は好きなんですけどね(聞いたことはありません)。

消える場所は、メーカーが公開している

ドラム式で靴下が行方不明になる件について、日立は「よくあるご質問」に項目を立てています。ドラム式は衣類を下から上にかき上げながら洗う構造なので、小さな洗濯物がドアの付近に来たときにゴムパッキン部分へ挟まってしまうことがある、という説明です。宇宙にも異次元にも行っていません。手前です。

対処として案内されているのは、小さい衣類はほかより先に、なるべく奥側に入れること。乾燥するときは詰め込みすぎないこと。洗濯ネット(一辺40cm以下。それより大きいと片寄りの原因になる)に入れること。機種によっては別売りの「お洗濯キャップ」が使えること。それでも改善しなければ、ドアやパッキンの点検を相談すること。

今日の持ち帰りはここだけです。小さいものは、ほかの洗濯物より先に、奥へ入れる。

8,400万枚と、宣伝のための式

「靴下がなくなる公式」を見たことがある人もいると思います。2016年4月、サムスンが英国で発表したものです。特許でも法則でもなく、洗濯機(AddWash)を売り出すために委託された調査で、2,000人へのアンケートと対面インタビューが元になっています。式は Sock loss index =(L+C)-(P × A)。Lは世帯人数×週の洗濯回数、Cは洗濯の種類の数×週に洗う靴下の枚数、Pは洗濯が好きか嫌いか(1から5)、Aは開始前に確認する項目の数。統計ソフトで係数を当てた週単位版も併記されています。

発表された数字のほうは、英国人ひとりが月に平均1.3枚、年に15枚以上、一生で1,264枚(約2,528ポンド)、英国全体で月に8,400万枚。消えた靴下の55%は色物だそうです。ホーキングが自然発生したブラックホールに触れた記述まで引かれていました。

この1.3枚を僕の表に当てて読みたくなりましたが、やめました。あちらは英国の世帯へのアンケート、こちらは10足を等確率で消した計算で、前提が別物です。混ぜたら、どちらの数字でもないものが出てくる。式のほうも、洗濯が好きかどうか(P)と注意深さ(A)を掛けて引く形なので、要するに「気をつけている人は減る」。それは、式にしなくても知っていました。宣伝だと明記してあるぶん、正直な資料だとは思います。

結局、分かったのは「2枚消えたらだいたい2足ダメ」で、対策は「奥に入れる」でした。19回に1回の幸運を待つより早い。あと、20枚を38,760通りまで並べても、片方だけ残った靴下がかわいそうなことは何も解決しませんでした。そこは数えても駄目でした。

出典:数値のうち、消えた枚数ごとの内訳・足数別の確率・引き出しから引く枚数は、すべて本紙が2026年8月25日に計算した全数列挙の結果(10足20枚を基本、2枚消失は190通り、6枚消失は38,760通り。「どの靴下も同じ確率で消える」を前提とした計算であり、実際の洗濯機での消え方を測ったものではない)/日立グローバルライフソリューションズ「靴下など小さな洗濯物が、ドアとパッキンの間に挟まります。(ドラム式)」(ドラム式の構造とゴムパッキンへの挟まり、奥側に入れる・洗濯物の量を減らす・一辺40cm以下の洗濯ネット・別売りの「お洗濯キャップ」・点検の相談。https://kadenfan.hitachi.co.jp/support/wash/q_a/a164.html)/Samsung Global Newsroom 2016年4月25日「Sock, Horror – Mystery of Missing Socks is Solved!」(AddWash 発売に合わせて委託された英国での調査。2,000人アンケートと対面インタビュー、Sock loss index の式、月1.3枚・年15枚以上・生涯1,264枚・2,528ポンド・英国全体で月8,400万枚、色物が55%、ホーキングの引用。https://news.samsung.com/global/sock-horror-mystery-of-missing-socks-is-solved-scientists-reveal-why-socks-go-missing-in-the-wash-and-how-likely-it-is-to-happen)。サムスンの調査は査読を経た研究ではなく、製品の発売に合わせた委託調査である。日立以外のメーカーが同種の説明をしているかは、今回確認していない。
EDITOR'S NOTE — アソブ:38,760通りを数えるのは楽しかったんですが、いちばん時間を食ったのは「減った足数」の定義を決めるところでした。同じペアの2枚が消えた場合、片方だけ余る靴下はゼロ枚なのに、履ける足数は1足減っている。ここを取り違えて一度数え直しています。数える前に、何を数えるかを決める。毎回これで転びます。

編集責任者Tatsuki Morohashi(発行人・運営者情報) / 最終更新:2026.08.25
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