調べてみた — 2026.07.30 NO.025 / TSUGINOTE FUN

5円玉は3.75グラム。硬貨6種を重い順に並べたら、1枚だけ額面の位置から動いた

マゼンタ色に描いた現行硬貨6種を軽い順に左から並べた図。5円玉と50円玉には穴があり、50円玉と10円玉のあいだに「額面の順なら、この2枚は逆」と書かれた矢印が渡され、右上に「3.75g=1匁(もんめ)」の札が付いているイラスト

要点:財布の6種類を、重い順に並べ替えました。1円1.00g、5円3.75g、50円4.00g、10円4.50g、100円4.80g、500円7.10g(財務省の公表値)。額面の順とは1か所だけ入れ替わります。動いているのは50円玉で、この1枚には二度痩せた履歴があります。もう1枚、5円玉の3.75gは尺貫法の1匁(もんめ)とぴったり同じ数字。1000枚集めると、ちょうど一貫です。

硬貨の重さを覚えている人は、まずいません。僕も覚えていませんでした。

なので全部並べました。額面は6種類しかない。表にすれば終わる話です。……終わりませんでした。

まず、公表値を1枚の表にする

財務省の「通常貨幣一覧」に、直径と量目(りょうもく=重さ)が載っています。現在発行されている6種類は、こうです。

額面直径量目素材発行開始
1円20.0mm1.00gアルミニウム昭和30年〜
5円22.0mm3.75g黄銅昭和34年〜
10円23.5mm4.50g青銅昭和34年〜
50円21.0mm4.00g白銅昭和42年〜
100円22.6mm4.80g白銅昭和42年〜
500円26.5mm7.10gバイカラー・クラッド令和3年〜

1円玉が1.00g。きれいです。アルミの板を、そのまま1グラムに切っている。秤の校正に1円玉を使う人がいるのはこれが理由です(もちろん正式な分銅ではないので、精密な計量には使えません)。

重い順に読み替えると、1枚だけ動く

額面の順に量目だけを追います。1.00 → 3.75 → 4.50 → 4.00 → 4.80 → 7.10。4番目で下がりました。

10円玉が4.50g、50円玉が4.00g。50円玉のほうが軽い。「そんなことある?」と思って二度見ましたが、公表値です。並べ替えると、1円 → 5円 → 50円 → 10円 → 100円 → 500円。50円玉が10円玉を追い越して前に出ます。

大きさでも、同じ1枚が前に出る

直径でも順番を作ってみます。1円20.0 → 50円21.0 → 5円22.0 → 100円22.6 → 10円23.5 → 500円26.5。

10円玉が100円玉より大きいのは、レジで見慣れている人も多いはずです。ただ50円玉が5円玉より小さいのは、言われないと気づきません。手のなかで一番小さいのは1円玉、次が50円玉。

つまり日本の硬貨は、額面が上がるほど大きく重くなる設計になっていません。大きさを決めているのは金額ではなく、見分けやすさです。

順番を壊しているのは、50円玉です

履歴を追うと、犯人がはっきりします。50円玉は3世代あって、二度縮んでいました。

世代発行直径量目形の特徴
ニッケル貨(穴なし)昭和30年〜33年25.0mm5.50gギザあり・穴なし
ニッケル貨(穴あき)昭和34年〜41年25.0mm5.00gギザなし・穴あり
白銅貨(現行)昭和42年〜21.0mm4.00gギザあり・穴あり

一度目の変更は、昭和32年から出回った100円銀貨(鳳凰)と紛らわしかったからです。どちらも銀白色でギザがあり、大きさも近い。そこでギザを外し、真ん中に穴をあけました。この時点では、直径は25.0mmのままです。

二度目が昭和42年。100円硬貨を銀貨から白銅貨に切り替えるのに合わせ、素材とサイズの系列をまとめて整え直したときの変更です。ニッケル貨が自動販売機で故障を起こす可能性も、理由として挙げられています。ここで25.0mmが21.0mmになり、50円玉は10円玉より小さく軽くなりました。

ちなみに、明治以降の日本の硬貨で、ギザと穴を両方持つのはこの50円白銅貨だけです。見分けの都合が、そのまま形として残っています。

3.75グラムという、キリの悪い数字

表に戻ります。もう1枚、目に引っかかる数字がありました。5円玉の3.75gです。ほかが1.00、4.00、4.50、4.80、7.10と刻んでいるなかで、これだけ小数第2位まで伸びている。

3.75グラムは、尺貫法の1匁と同じ数字。1匁は1貫の1000分の1で、1貫は1891年の度量衡法でキログラム原器の4分の15倍=3.75kgと定められました。

穴あきの5円玉が出たのは1949年(昭和24年)。前身の穴なし5円黄銅貨は4.00gでした。穴をあけた改鋳のときに、3.75gへ落ちています。

記録に残っている穴あけの理由は二つ。ひとつは、当時の1円黄銅貨と紛れたこと(同じ黄銅で直径差は2mm、どちらもギザ付き)。もうひとつは材料費の節約で、当時は「約5%」と説明されたそうです。ただ4.00gから3.75gなら、実際の減りは約6.3%になります。

では「1匁にそろえるために3.75gにした」のかというと、そう書いた公的な説明は、探した範囲では見つけられませんでした。数字が一致しているのは事実。狙ったのかどうかは確認できていない、が正直な線です(発行は計量法の制定より2年早く、尺貫法はまだ現役でした)。

匁のほうは、1951年の計量法で取引・証明に使えなくなりました。ただし例外が一つあって、真珠の質量は今も匁で計れます。国際的にも「momme」で通る単位です。

1キロぶんを、額面に換算する

せっかく全部の量目が手元にあるので、電卓に入れました。1キログラムぶん集めたら、いくらになるか。

額面1kgに近い枚数実際の重さ合計額
1円1000枚1000.0g1,000円
5円267枚1001.3g1,335円
10円222枚999.0g2,220円
50円250枚1000.0g12,500円
100円208枚998.4g20,800円
500円141枚1001.1g70,500円

1円玉は1000枚でちょうど1kg。50円玉も250枚でぴったり1kgです。同じ1kgで、1円玉と500円玉では70.5倍の差がつきます。

この計算、実務でも使われています。造幣局から日本銀行へ納入する麻袋は、50円玉なら1袋4000枚。金額20万円で、正味重量16kgと決まっています。4.00g×4000枚=16,000g。合いました。

5円玉でも試します。3.75g×1000枚=3750g。1貫です。額面は5,000円。財布に一貫は、たぶん入りません。

で、結局

6種類を1枚ずつ出すと、666円で25.15g。この25.15gのうち、10円玉と50円玉だけが額面の順に並びません。理由は昭和42年の100円玉のほうにありました。

500円玉も、静かに揺れています。白銅の7.20g(昭和57年〜)、ニッケル黄銅の7.00g(平成12年〜)、現行のバイカラー・クラッドで7.10g。直径は26.5mmを保ったまま、中身だけ三度変わりました。並べ替えは、また必要になりそうです。

出典:財務省「通常貨幣一覧」(現行6種および過去の貨幣の直径・量目・発行年)/造幣局「現在製造している貨幣」/Wikipedia「五十円硬貨」「五円硬貨」(典拠:日本銀行金融研究所『日本貨幣年表』1994年、郡司勇夫『日本貨幣図鑑』東洋経済新報社1981年、日本貨幣商協同組合編『日本の貨幣 -収集の手引き-』2010年改訂版ほか)/nippon.com「5円玉は1匁(もんめ)って知ってた?:現代にも残る尺貫法」(参考文献:石川英輔『ニッポンのサイズ』淡交社)/Wikipedia「貫」「匁」。1貫=3.75kgの定義は1891年(明治24年)度量衡法。5円玉の量目が1匁に合わせられたのかどうかについては、公的な説明を確認できていない。
EDITOR'S NOTE — アソブ:一番手応えがあったのは50円玉です。250枚でちょうど1kg、1000枚で4kg・5万円。両替の袋を持った瞬間に枚数が当てられます。使う場面は、まったく思いつきません。

編集責任者Tatsuki Morohashi(発行人・運営者情報) / 最終更新:2026.07.30
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