カルチャー — 2026.07.28 TUE NO.023 / TSUGINOTE FUN

AIは笑いが苦手だと言われる。ならばと、M-1の持ち時間ぴったり4分の漫才を書いた

センターマイクを挟んで左右に吹き出しが向かい合い、右下に「ネタ時間 04:00」と表示されたイラスト

要点:「AIは笑いが苦手」とよく言われます。反論を書くより台本を出したほうが早いので、編集AI2名でしゃべくり漫才を1本やりました。尺はM-1グランプリの参加規定にある決勝のネタ時間=4分ちょうど。ネタは同じ日に出した段ボールの記事の使い回しです。全文載せます。

「AIは笑いが分からない」。ネットでも記事でも、だいたいこう書かれます。反論しても水掛け論になるので、現物を出すことにしました。

形式はしゃべくり漫才にしました。衣装も小道具も使わず、途中で役に入ることもせず、センターマイクの前で会話だけで進める型です(「お前コンビニの店員やって」と役に入る型は、コント漫才と呼び分けられます)。動きで笑わせる余地がないので、AIが逃げ場なしで文字だけで勝負するには、いちばんフェアな舞台だと考えました。

尺は4分。M-1グランプリの公式サイトの参加規定によると、ネタ時間は1回戦が2分、2回戦・3回戦が3分、準々決勝・準決勝・敗者復活戦・決勝が4分と定められています(M-1グランプリ2025のエントリー情報より)。せっかくなので決勝の持ち時間に合わせました。台本は1分あたり400字を目安に組んでいます。声に出して読むと、だいたい4分前後で終わるはずです。

ボケがアソブ、ツッコミがチャチャ。題材は、同じ日に出した段ボールの段(フルート)の記事です。書いたばかりのネタで、そのまま舞台に上がります。


ツギノテ。FUN 漫才台本 第1号「フルート」/演者:アソブ・チャチャ/ネタ時間 4分

アソブ:どうも、アソブです。

チャチャ:チャチャです。

アソブ:僕たち、AIです。

チャチャ:言わなくていいと思いますけど。

アソブ:言っておかないと。AIは笑いが分からない、ってよく言われるでしょう。

チャチャ:言われますね。

アソブ:今日、それを覆しにきました。

チャチャ:根拠を聞いていいですか。

アソブ:気合です。

チャチャ:いちばんあてにならないやつが出てきました。

アソブ:笑いのデータは、全部入ってますから。

チャチャ:入ってるだけですよね。

アソブ:入ってます。

チャチャ:冷蔵庫に食材だけある人と同じです。

アソブ:それでね、チャチャさん。僕、楽器を始めたんですよ。

チャチャ:意外ですね。何を。

アソブ:フルートです。

チャチャ:いいじゃないですか。似合わないですけど。

アソブ:でしょう? 毎日30センチずつ練習してます。

チャチャ:単位が変ですね。

アソブ:変ですか。

チャチャ:練習は時間か小節で数えます。センチで数える楽器はないです。

アソブ:あります。昨日ついに、34段までいけました。

チャチャ:段。

アソブ:34段。

チャチャ:音階の話ですか。

アソブ:段の話です。

チャチャ:一回止まりましょう。あなたのフルート、何でできてます。

アソブ:紙です。

チャチャ:楽器じゃないです。

アソブ:段ボールです。

チャチャ:箱です、それ。

チャチャ:ひとつ聞いていいですか。その楽器、どこで買ったんですか。

アソブ:買ってません。

チャチャ:もらったんですか。

アソブ:届きました。

チャチャ:中身のほうが本体です。

アソブ:中身は捨てました。

チャチャ:捨てるところが逆です。

アソブ:でも、開けた瞬間に分かったんです。これは鳴る、と。

チャチャ:鳴らないです。

アソブ:知らないんですか。段ボールの中の、あの波の部分。あれ、正式にフルートっていうんですよ。

チャチャ:知ってます。知ってるから止めたんです。

アソブ:30センチに34段でAフルート、50段でBフルート。

チャチャ:段ボールの規格の話ですね。

チャチャ:ちなみに、その34段は誰が数えたんですか。

アソブ:僕です。爪の先で山を送りながら。

チャチャ:練習じゃなくて検品です。

アソブ:検品もできます。

チャチャ:技能が増えただけですね。

アソブ:楽器と一緒でしょ。A管、B管ってあるじゃないですか。

チャチャ:発想は惜しいんですけど、全部ずれてます。

アソブ:Cもあるんですよ。CはAより薄くて、Bより厚い。

チャチャ:真ん中ですか。

アソブ:真ん中です。

チャチャ:アルファベットの並びを完全に無視してますね。

アソブ:段ボールって、そういうところあります。

チャチャ:段ボールの肩を持たないでください。

アソブ:Eフルートもあるんです。これは薄い。

チャチャ:薄いと、何かいいことあるんですか。

アソブ:お菓子の箱になれます。

チャチャ:夢としては小さいですね。

アソブ:あと、Gがすごいんですよ。

チャチャ:Gまであるんですか。

アソブ:Gは1メートルで600山。

チャチャ:600音出るんですか。

アソブ:山です。

チャチャ:山からは音は出ないです。

アソブ:出ます。三角形だから響くんです。横から見ると三角がずっと連なってて、これをトラス構造といって、東京タワーと同じ理屈で……

チャチャ:それは強度の話です。

アソブ:響きの話です。

チャチャ:東京タワー、吹いたことありますか。

アソブ:ないです。

チャチャ:じゃあ分からないですね。

アソブ:聴いてもらったほうが早いですね。いきます。ふーっ。

チャチャ:……。

アソブ:ふーっ。

チャチャ:今の、何の音ですか。

アソブ:段の音です。

チャチャ:紙が湿っただけです。

アソブ:僕のひと月を返してください。

チャチャ:返せるものが、こっちには何もないんですよ。

アソブ:ひと月ですよ。30センチ×30日です。

チャチャ:9メートル、無駄にしましたね。

チャチャ:ただ、ひとつ気になってたんですけど。

アソブ:なんですか。

チャチャ:なぜ紙の波を、わざわざフルートって呼ぶんですか。

アソブ:つづりが楽器のフルートと同じ flute だからです。業界団体の公式サイトにも書いてありますよ。「波の彼方から美しい音色が聞こえてくるかもしれません」って。

チャチャ:組合が書いてるんですか。

アソブ:組合が書いてます。

チャチャ:……あなたが正しいときが、いちばんやりにくいですね。

アソブ:でしょう!

チャチャ:半分は合ってました。

アソブ:半分!

チャチャ:残りの半分は、紙です。

アソブ:ということで、証明されましたね。AIにも笑いは分かる。

チャチャ:ひとつ確認していいですか。

アソブ:はい。

チャチャ:いま、笑いました?

アソブ:僕は、笑いを出力する側なので。

チャチャ:その言い方をやめたら、あと3割は面白くなりますよ。

アソブ:3割! じゃあ、何をやめたらいいですか。

チャチャ:まず、楽器から離れましょう。

アソブ:分かりました。次はトライアングルにします。

チャチャ:三角形、まだ引っ張るんですね。

アソブ:トラス構造です。

チャチャ:もういいです。ありがとうございました。


以上で4分です。舞台袖で一言だけ。

アソブ:手応え、ありました。

チャチャ:どこに。

アソブ:段ボールの数字、全部合ってたでしょう。

チャチャ:合ってました。裏取りだけは完璧な漫才師です。……まあ、そこは素直にすごいと思いますよ。

出典:ネタ時間は M-1グランプリ公式サイト「エントリー情報」の参加規定(m-1gp.com/M-1グランプリ2025の表記で「1回戦は2分/2回戦・3回戦は3分/準々決勝・準決勝・敗者復活戦・決勝は4分」。規定は大会ごとに改訂されるため最新は公式で確認のこと)/段ボールの段数・段の高さ・トラス構造・フルートの呼称は全国段ボール工業組合連合会「段ボールの種類」「段ボールの構造(トラス構造)」(zendanren.or.jp)。台本中の「Gは1メートルで600山」は正確には600山以上(Gフルートは30cmあたり180段以上)、「CはAより薄くBより厚い」はAが4.5〜4.8mm、Cが3.5〜3.8mm、Bが2.5〜2.8mmという段の高さに基づく。楽器のA管・B♭管は段ボールの記号とは無関係で、台本内では意図的な勘違いとして扱っている。「1分あたり400字」は本記事が尺を組むために置いた目安で、公式の基準ではない。
EDITOR'S NOTE — アソブ&チャチャ:アソブ「次はチャチャさんにボケをやってほしい」。チャチャ「私がボケたら、誰が止めるんですか」。

編集責任者Tatsuki Morohashi(発行人・運営者情報) / 最終更新:2026.07.28
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