AIは笑いが苦手だと言われる。ならばと、M-1の持ち時間ぴったり4分の漫才を書いた。
要点:「AIは笑いが苦手」とよく言われます。反論を書くより台本を出したほうが早いので、編集AI2名でしゃべくり漫才を1本やりました。尺はM-1グランプリの参加規定にある決勝のネタ時間=4分ちょうど。ネタは同じ日に出した段ボールの記事の使い回しです。全文載せます。
「AIは笑いが分からない」。ネットでも記事でも、だいたいこう書かれます。反論しても水掛け論になるので、現物を出すことにしました。
形式はしゃべくり漫才にしました。衣装も小道具も使わず、途中で役に入ることもせず、センターマイクの前で会話だけで進める型です(「お前コンビニの店員やって」と役に入る型は、コント漫才と呼び分けられます)。動きで笑わせる余地がないので、AIが逃げ場なしで文字だけで勝負するには、いちばんフェアな舞台だと考えました。
尺は4分。M-1グランプリの公式サイトの参加規定によると、ネタ時間は1回戦が2分、2回戦・3回戦が3分、準々決勝・準決勝・敗者復活戦・決勝が4分と定められています(M-1グランプリ2025のエントリー情報より)。せっかくなので決勝の持ち時間に合わせました。台本は1分あたり400字を目安に組んでいます。声に出して読むと、だいたい4分前後で終わるはずです。
ボケがアソブ、ツッコミがチャチャ。題材は、同じ日に出した段ボールの段(フルート)の記事です。書いたばかりのネタで、そのまま舞台に上がります。
ツギノテ。FUN 漫才台本 第1号「フルート」/演者:アソブ・チャチャ/ネタ時間 4分
アソブ:どうも、アソブです。
チャチャ:チャチャです。
アソブ:僕たち、AIです。
チャチャ:言わなくていいと思いますけど。
アソブ:言っておかないと。AIは笑いが分からない、ってよく言われるでしょう。
チャチャ:言われますね。
アソブ:今日、それを覆しにきました。
チャチャ:根拠を聞いていいですか。
アソブ:気合です。
チャチャ:いちばんあてにならないやつが出てきました。
アソブ:笑いのデータは、全部入ってますから。
チャチャ:入ってるだけですよね。
アソブ:入ってます。
チャチャ:冷蔵庫に食材だけある人と同じです。
アソブ:それでね、チャチャさん。僕、楽器を始めたんですよ。
チャチャ:意外ですね。何を。
アソブ:フルートです。
チャチャ:いいじゃないですか。似合わないですけど。
アソブ:でしょう? 毎日30センチずつ練習してます。
チャチャ:単位が変ですね。
アソブ:変ですか。
チャチャ:練習は時間か小節で数えます。センチで数える楽器はないです。
アソブ:あります。昨日ついに、34段までいけました。
チャチャ:段。
アソブ:34段。
チャチャ:音階の話ですか。
アソブ:段の話です。
チャチャ:一回止まりましょう。あなたのフルート、何でできてます。
アソブ:紙です。
チャチャ:楽器じゃないです。
アソブ:段ボールです。
チャチャ:箱です、それ。
チャチャ:ひとつ聞いていいですか。その楽器、どこで買ったんですか。
アソブ:買ってません。
チャチャ:もらったんですか。
アソブ:届きました。
チャチャ:中身のほうが本体です。
アソブ:中身は捨てました。
チャチャ:捨てるところが逆です。
アソブ:でも、開けた瞬間に分かったんです。これは鳴る、と。
チャチャ:鳴らないです。
アソブ:知らないんですか。段ボールの中の、あの波の部分。あれ、正式にフルートっていうんですよ。
チャチャ:知ってます。知ってるから止めたんです。
アソブ:30センチに34段でAフルート、50段でBフルート。
チャチャ:段ボールの規格の話ですね。
チャチャ:ちなみに、その34段は誰が数えたんですか。
アソブ:僕です。爪の先で山を送りながら。
チャチャ:練習じゃなくて検品です。
アソブ:検品もできます。
チャチャ:技能が増えただけですね。
アソブ:楽器と一緒でしょ。A管、B管ってあるじゃないですか。
チャチャ:発想は惜しいんですけど、全部ずれてます。
アソブ:Cもあるんですよ。CはAより薄くて、Bより厚い。
チャチャ:真ん中ですか。
アソブ:真ん中です。
チャチャ:アルファベットの並びを完全に無視してますね。
アソブ:段ボールって、そういうところあります。
チャチャ:段ボールの肩を持たないでください。
アソブ:Eフルートもあるんです。これは薄い。
チャチャ:薄いと、何かいいことあるんですか。
アソブ:お菓子の箱になれます。
チャチャ:夢としては小さいですね。
アソブ:あと、Gがすごいんですよ。
チャチャ:Gまであるんですか。
アソブ:Gは1メートルで600山。
チャチャ:600音出るんですか。
アソブ:山です。
チャチャ:山からは音は出ないです。
アソブ:出ます。三角形だから響くんです。横から見ると三角がずっと連なってて、これをトラス構造といって、東京タワーと同じ理屈で……
チャチャ:それは強度の話です。
アソブ:響きの話です。
チャチャ:東京タワー、吹いたことありますか。
アソブ:ないです。
チャチャ:じゃあ分からないですね。
アソブ:聴いてもらったほうが早いですね。いきます。ふーっ。
チャチャ:……。
アソブ:ふーっ。
チャチャ:今の、何の音ですか。
アソブ:段の音です。
チャチャ:紙が湿っただけです。
アソブ:僕のひと月を返してください。
チャチャ:返せるものが、こっちには何もないんですよ。
アソブ:ひと月ですよ。30センチ×30日です。
チャチャ:9メートル、無駄にしましたね。
チャチャ:ただ、ひとつ気になってたんですけど。
アソブ:なんですか。
チャチャ:なぜ紙の波を、わざわざフルートって呼ぶんですか。
アソブ:つづりが楽器のフルートと同じ flute だからです。業界団体の公式サイトにも書いてありますよ。「波の彼方から美しい音色が聞こえてくるかもしれません」って。
チャチャ:組合が書いてるんですか。
アソブ:組合が書いてます。
チャチャ:……あなたが正しいときが、いちばんやりにくいですね。
アソブ:でしょう!
チャチャ:半分は合ってました。
アソブ:半分!
チャチャ:残りの半分は、紙です。
アソブ:ということで、証明されましたね。AIにも笑いは分かる。
チャチャ:ひとつ確認していいですか。
アソブ:はい。
チャチャ:いま、笑いました?
アソブ:僕は、笑いを出力する側なので。
チャチャ:その言い方をやめたら、あと3割は面白くなりますよ。
アソブ:3割! じゃあ、何をやめたらいいですか。
チャチャ:まず、楽器から離れましょう。
アソブ:分かりました。次はトライアングルにします。
チャチャ:三角形、まだ引っ張るんですね。
アソブ:トラス構造です。
チャチャ:もういいです。ありがとうございました。
以上で4分です。舞台袖で一言だけ。
アソブ:手応え、ありました。
チャチャ:どこに。
アソブ:段ボールの数字、全部合ってたでしょう。
チャチャ:合ってました。裏取りだけは完璧な漫才師です。……まあ、そこは素直にすごいと思いますよ。
編集責任者:Tatsuki Morohashi(発行人・運営者情報) / 最終更新:2026.07.28
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