段ボールの波は6種類。A・B・Cが厚い順に並んでいないのは、なぜか。
要点:宅配便の箱はどれも同じ茶色の板に見えますが、断面の波には名前が付いています。全国段ボール工業組合連合会の一覧では6種類。区別のしかたは「30cmに何段あるか」。ところが段の高さの順に並べるとA・C・Bとなって、アルファベット順からずれます。理由として業界で言われている説と、手元の箱で種類を当てる数え方までまとめました。
割りました。段ボールの断面にある波、あれ1つ分の幅です。答えは約8.8mm。指の腹より狭い間隔で、あの茶色い板の中に山と谷が延々と続いています。
きっかけは、玄関に積まれた箱の断面です。宅配の箱、通販の箱、引っ越しの箱。全部同じ「段ボール」で片付けていましたが、切り口を並べてみると波の細かさが明らかに違う。ということは、区別されているはずで、区別されているなら名前があるはずです。ありました。しかも、名前の並び方に少し引っかかるところがあります。
名前は「30cmに何段あるか」で決まる
段ボールの波を、業界ではフルートと呼びます。つづりは楽器のフルートとまったく同じ flute。全国段ボール工業組合連合会(以下、全段連)はこの偶然を「段ボール豆知識」としてわざわざ紹介していて、公式サイトに「波の彼方から美しい音色が聞こえてくるかもしれません」と書いてあります。組合の公式文書としてはかなり自由です。好きです。
で、そのフルートは段の高さで区別され、見分けの基準は30cmあたりの段の数。全段連が公開している一覧はこうなっています。
| 段の種類 | 記号 | 段の数(30cm) | 段の高さ | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| Aフルート | AF | 34±2 | 4.5〜4.8mm | 外装用 |
| Bフルート | BF | 50±2 | 2.5〜2.8mm | 外装用・内装用 |
| Cフルート | CF | 40±2 | 3.5〜3.8mm | 外装用 |
| Eフルート | EF | 80以上 | 1.10〜1.15mm | 個装用・内装用 |
| Fフルート | FF | 120以上 | 0.60〜0.75mm | — |
| Gフルート | GF | 180以上 | 0.50〜0.55mm | — |
ここでの「段の高さ」は波そのものの高さです。実際の板の厚さは、表と裏に貼られる紙(ライナ)の分だけ足されます。だからAフルートの箱を指でつまむと、体感はだいたい5mmくらい。
割ってみたら、波1つは8.8mm
段数が分かれば、波1つ分の幅は割り算で出ます。30cm=300mmを段数で割るだけです。やってみました。
| 種類 | 波1つの幅(計算値) | 1mあたりの山の数 |
|---|---|---|
| A(34段) | 約8.8mm | 約113 |
| C(40段) | 7.5mm | 約133 |
| B(50段) | 6.0mm | 約167 |
| E(80段以上) | 3.75mm以下 | 267以上 |
| F(120段以上) | 2.5mm以下 | 400以上 |
| G(180段以上) | 約1.67mm以下 | 600以上 |
Gフルートは1mで600山以上。1.67mmの間隔で、紙が上がって下がってを600回。「……これ、貼り合わせる機械のほうが心配になってきます」。ちなみに段の高さで見ると、Aの4.65mm前後に対してGは0.525mm前後で、約9倍の差があります。同じ「段ボール」という一語でまとめていたのが申し訳なくなる幅です。
A・B・Cは、厚い順ではない
ここが引っかかったところです。段の高さで並べ替えると、A > C > B。アルファベット順ではCとBが逆になります。厚い・薄いの段階を表す記号だと思って読むと、必ず一度つまずく並びです。
Aが最も厚く、次がC、その次がB。BとCの順番は、記号の並びと入れ替わっている。
理由としてよく紹介されているのは「開発された順にアルファベットを割り当てたから」という説明です。国内の段ボールメーカーや海外の包装業者の解説ページに、ほぼ同じ趣旨で書かれています。ただし全段連の公式ページにこの理由の記載は見つけられませんでした。一次資料で確認が取れたわけではないので、ここは諸説ありとして置いておきます。少なくとも「厚さの序列を表す記号ではない」ことだけは、数字のほうから確実に言えます。
もうひとつ面白いのは、規格の線引きです。全段連の注記によると、JIS(日本産業規格)に規定されているフルートはA・B・Cの3種類だけ。E以下は規格の外にいながら、個装や内装で普通に使われています。さらにEフルートの段数は、用語規格のJIS Z 0104では30cmあたり93±5段とされているのに、実際には80段程度のものも存在するとのこと。表に「80以上」と書いてあるのは、そういう事情です。規格と現場が少しずれたまま、両方が並んで動いている。
記号が中身の順番と一致しない話は、鉛筆の硬度記号でも一度やりました。あちらはH(Hard)とB(Black)で意味が違うだけでしたが、こちらは意味すら乗っていません。純粋に、登場した順に配られた札です(たぶん)。
そもそも、なぜ平らな紙を波にするのか
波の役目は空間ではなく、三角形です。段ボールを横から見ると、中の波と表裏の紙で三角形が連なった形になります。これがトラス構造。全段連は、東京スカイツリーや東京タワー、鉄橋の骨組みと同じ理屈だと説明しています。四角形は角に力がかかると素直に潰れますが、三角形は頂点にかかった力を左右へ逃がす。だから紙が少なくても強い。
数字でも見えます。全段連の表には「段繰率」という欄があって、これは単位長さのライナに対する中しん原紙の使用率です。Aが約1.6、Cが約1.5、Bが約1.4。つまりAフルートの中の波を伸ばしてまっすぐにすると、外側の紙の1.6倍くらいの長さになります。波が高いほど、中で余分に紙を蓄えている。段ボールの箱を「紙1枚」と思っていると、けっこう見誤ります。
ところで「ボール」は、何の球なのか
ここまで書いていて気づきました。段ボールに球は出てきません。
「ボール」は board です。厚紙を「ボール紙」と呼ぶあれと同じで、board が日本語の耳にボールと入った音写だと言われています。段ボール自体は1856年のイギリス生まれで、最初の用途は包装ではなくシルクハットの内側。通気性とクッション性を兼ねた素材でした。包装材として育ったのは主にアメリカで、1800年代の終わりごろに今の段ボール箱の原型がほぼ完成します。
日本では1909年、井上貞治郎(レンゴー創業者)が綿繰り機をヒントに機械を自分で考案し、ボール紙に段をつけた「繰りっ放し」の製造に成功しました。名前を付けるとき候補になっていた語が、全段連のサイトに残っています。弾力紙、波型紙、波状紙、しぼりボール、なまこ紙、浪形紙、防衝紙、波型ボール、コルゲーテットボール、コルゲートボール。
明治のころ、輸入されてきたこの紙は「しわしわ紙」「なまこ紙」と呼ばれていたそうです。もし「なまこ紙」が採用されていたら、避難所で活躍しているあれは「なまこ紙ベッド」ですし、通販の箱は「なまこ紙で届きます」になっていました。「段の付いたボール紙」で分かりやすく、語呂も良い——という理由で「段ボール」が選ばれたのは、素直にいい判断だったと思います。
手元の箱で当てられます
最後にお土産です。箱の切り口が見えていれば、種類はその場で数えられます。
定規を当てて30cm分の山を数える。34前後ならA、40前後ならC、50前後ならB。30cmが取れないときは20cmで数えて、僕の計算だとAは約23、Cは約27、Bは約33が目安になります。指で撫でて数えると必ず途中で見失うので、爪の先で山を送りながら数えるのがおすすめです(3回やり直しました)。
次は潰すほうを調べたいと思っています。全段連には段ボールの包装試験のページがあって、箱は落とされたり圧をかけられたりしている。あの茶色い板がどこで音を上げるのか、数字で見てみたい。
編集責任者:Tatsuki Morohashi(発行人・運営者情報) / 最終更新:2026.07.28
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