調べてみた — 2026.07.23 NO.015 / TSUGINOTE FUN

フラミンゴは灰色で生まれる。あのピンクは食べ物の色だった

灰色からピンクへ並ぶフラミンゴと、水中のエビ

要点:フラミンゴのピンクは、生まれつきではありません。ヒナは灰色。あの色は、食べている藻やエビに含まれる色素(カロテノイド)を肝臓が処理して、羽・脚・くちばしに沈着させた"あとから付く色"です。だからエサが乏しいと色あせ、動物園ではわざわざ色素を足す。おまけに本人は、羽に「化粧」までして濃く見せています。

フラミンゴといえば、ピンク。あの色があるから絵になるし、名前を聞いただけで色が浮かびます。でも、ふと立ち止まって考えました。あれは生まれつきなのか? 結論から書くと、違います。フラミンゴは、灰色で生まれてくるのです。

ヒナは、まったくピンクじゃない

孵ったばかりのフラミンゴのヒナは、灰色から白っぽい地味な色をしています。あの鮮やかなピンクになるまでには、2〜3年かかるといわれます。生まれたときの色と、大人の色が別物——ここがもう最初の「へぇ」です。では、その2〜3年で何が起きているのか。答えは、ぜんぶ食事です。

色の出どころは、食べ物だった

フラミンゴは、浅い水の中の藻や、小さな甲殻類(エビの仲間)を濾しとって食べています。これらにはカロテノイドという色素が含まれています。ニンジンやカボチャをオレンジにしている、あの系統の色素です。フラミンゴが食べるのは主にカンタキサンチンという赤〜オレンジ色のものと、βカロテン。肝臓の酵素がこれを分解・加工し、伸びてくる羽や、脚、くちばしに送り込んで沈着させる。こうして体の外側が、だんだんピンクに染まっていきます。

面白いのは、色素が渡ってくる経路です。冒頭の写真をよく見ると、水面の下にたくさんのエビがいます。あのエビ自身が赤っぽいのも、もとをたどれば同じ藻のカロテノイドを食べているから。つまり、

順番だれ役どころ
1藻(藍藻など)カロテノイドを作る・ためる
2エビの仲間藻を食べて、体に色素をためる
3フラミンゴ藻とエビを食べて、羽に色をためる

色素は、こうしてバトンのように受け渡されていきます。フラミンゴのピンクは、いわば食物連鎖の下から積み上がってきた色。「あなたは食べたものでできている」を、これほど素直に体の色で見せてくれる動物も珍しい、と思います。

だから、エサ次第で色が変わる

色の濃さは、エサの中身に左右されます。カロテノイドが豊富な藻の多い湖で食べている個体ほど、濃く鮮やかになる。逆に色素の乏しい環境では、淡く、ぼやけたピンクにとどまるとされます。これは飼育の現場でもはっきり出ます。動物園で色素の足りないエサだけを与えると、フラミンゴはだんだん白っぽく色あせてしまう。そこで多くの園では、カンタキサンチンなどの色素をエサに足して、あの色を保っています。ある報告では、色素を補ったところ営巣・繁殖がうまくいった、ともいわれます。私たちが「フラミンゴらしい」と思う濃いピンクは、栄養管理の成果でもあるわけです。

そのうえ、自分で「化粧」している

ここまでは「食べた色が出る」という受け身の話。ところが、フラミンゴはもっと積極的でした。スペインの湿地でオオフラミンゴ(greater flamingo)を調べた研究によると、彼らは尾のつけ根にある尾脂腺(びしせん)という器官から出る脂を、カロテノイドごと羽にこすりつけて、色を濃く"盛って"いたのです。いわば、化粧。しかもこの化粧は繁殖期に濃く塗られ、子育てで手入れをさぼる時期には色が落ちていく、という季節変化まで確認されています。濃いピンクは「私はよく食べていて元気です」という看板になり、相手選びで効いていると考えられています。

塗って落として、また塗る。あの優雅な立ち姿の裏で、案外まめな身だしなみが続いていたと思うと、少し親近感がわきます。

ピンクは、フラミンゴだけの話じゃない

この「食べた色が出る」仕組みは、じつは食卓のすぐそばにもあります。サケの身がピンク〜オレンジなのも、同じ理屈。天然のサケはオキアミやエビなどを食べ、そこに含まれるアスタキサンチン(これもカロテノイドの一種)が筋肉にたまって色づきます。だから、この色素を含まないエサだけで育てた養殖魚の身は、放っておくと灰色っぽくなる。そこで養殖では、藻由来や人工のアスタキサンチンをエサに足して、あのサーモンピンクに仕上げています。フラミンゴの飼育とやっていることはそっくりで、色素は見た目だけでなく魚の健康や栄養にも関わるとされます。フラミンゴを「特別な色の鳥」と思っていましたが、色のからくり自体は、切り身になって皿の上にも並んでいたわけです。


まとめると、フラミンゴのピンクは、生まれ持った肩書きではありませんでした。灰色から始まって、藻とエビを食べ、肝臓で色素を仕込み、足りなければ環境や飼育で補われ、本人は化粧で盛る。日々の食事と手入れの積み重ねが、あの一色に出ている。次にどこかでフラミンゴを見かけたら、「きれい」の前にひとこと、「よく食べてるね」と言ってあげたくなります。色が薄めの子がいたら、それはそれで、いま食事療法の途中なのかもしれません。

出典:Britannica「Why Are Flamingos Pink?」(britannica.com)/Smithsonian Magazine「For Some Species, You Really Are What You Eat」(smithsonianmag.com)/National Geographic「Flamingos Apply "Makeup" to Impress Mates」(nationalgeographic.com)/Amat et al. "Greater flamingos use uropygial secretions as make-up"(Behavioral Ecology and Sociobiology, 2011、springer.com)/サケのアスタキサンチンは The Conversation「The colour of farmed salmon comes from adding an antioxidant to their feed」(theconversation.com)。色づくまでの年数・色素の種類・飼育下の補給などは資料によって表現に幅があり、ここでは複数の一般向け・学術資料に共通する範囲でまとめた。
EDITOR'S NOTE — アソブ:写真の灰色の子から順に目で追うと、色の「途中経過」が並んでいるみたいで見飽きません。うちの冷蔵庫のニンジンも、食べ続けたら少しはピンクになるでしょうか。ならないですね。

編集責任者Tatsuki Morohashi(発行人・運営者情報) / 最終更新:2026.07.23
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